「ゴツい」「デカい」をブランドアイコンとするMonkeyFlipが、はじめて「軽い」を手がけたときの話をしよう。2012年冬の【TAROTolic】コレクション。フロントに4ミリ生地を使った『クラウドシリーズ』のことである。

それまで一貫して「ゴツい」「デカい」を作ってきたデザイナーとして「軽い」フレームを出すことは簡単に割り切れる問題ではなく、随分悩んだ末にテンプルを非対称にするなどで折り合いをつけたのをいまもハッキリ覚えている。

あれから5年。一般論で言うなら眼鏡フレームはドンドン「軽さ」に流れている。ショッピングセンターのチェーン店では、TRやウルテム、ポリアミドなどといったナイロン樹脂素材が(型を作って大量生産するためのロープライスと相まって)周りを睥睨してるし、いまのトレンドのクラシックでもテンプルに細いメタルを使用した軽量型が幅を利かせてきた。

挑戦なのか、これは?
「おら、おまえ、5年で成長したところを見せてみろよ!」というMonkeyFlipに対する煽動なのか?

僕はジッと考えた。

簡単に挑発に乗ってはいけない。軽くしようとすると当然デザインできる範囲が少なくなるため、一歩間違えれば「フツーの眼鏡」になってしまうし、それどころか最悪を想定するなら「デザインもフツー」で「軽くもない」という、どこにも良さの見つけられないモデルになってしまう。

だが。しかし。
出したいではないか。
挑戦されているなら、返り討ちにしたいではないか。
僕らはそうして21年を過ごしてきた。
だから、5年振りに「軽さ」をメインにデザインをした。

その中で『陸童』は「シャープ」をコンセプトにして考えたモデルである。「軽い」言葉でいうなら「シュッとかけれる」フレーム。細身の刀の切れ味をイメージして練り上げた一本だ。

実際にかけていただかないと伝わらないところだが、リアルに「軽く」「かけやすく」「シュッとした」フレームに仕上がっているので、ぜひかけて試して欲しい。

ちなみに各モデル名についてる「童」の名は座敷童から取っている。その家に福をもたらす小さな妖怪の名は、「軽さ」と「力」を合わせ持ったこのモデルたちに恐ろしいほどハマっているから、他の名前をつける選択肢はまったくなかった。

(文責:猿頭★岸)