3年前より、デザイナーとしての新しい、そして最後のチャレンジと位置づけてスタートした「○頭」シリーズ(テンプルの内側に印字してあるMonkeyFlipロゴの後に「○頭」と入れていることから、こう呼んでいる)。

クラシックフォルムをベースとして、アニメやコミックをモチーフとしたギミックを入れていくことで「大人の真面目な遊び眼鏡」を目指しているシリーズだ。過去二回は、「早く人間になりたい妖怪たち」、そして「3つのシモベを使う超能力少年」の物語をモチーフとしたギミックを施し、シリーズを展開してきた。

今回のモチーフは、MonkeyFlipでコラボフレームをリリースさせていただいたカネコアツシさんの手によるコミック。日本を代表する漫画家が描いた「妖怪から自分の身体を取り返すべく旅する少年と泥棒の子供の物語」を、カネコアツシさんがリメイクしたコミックをチョイスした(かなり分かりづらい説明で申し訳ない)。

なぜこのコミックを選んだのか?

25周年モデルの裏テーマにピッタリだからだ。

その裏テーマは、「LACK」。
「欠乏」とか「欠如」の意味。

MonkeyFlipが25周年を迎える今年、世界はまだ新しいウィルスに翻弄され、僕たちは日々の生活の色んなものを奪われている、欠落を余儀なくされている。そして新型ウィルスが収まっても、この欠落はきっと、これからのスタンダードになる(と、僕は予想している)。

そうであれば。
25周年をリアルで華やかに迎えることができなかった僕の、そしてMonkeyFlipスタッフ一同の欠乏感も合わせ飲みつつ、この「LACK」を引き受け、デザインとして昇華させてやろう。それが今回のシリーズで、僕が僕の中に持っていた裏デザインテーマであり、カネコさんがリメイクしたコミックは、まさにこの裏テーマにピッタリなのだ。

モデルの話に移ろう。

「○頭」シリーズではこれまで、リプロダクトプリント(再現プリント)を中心にモデルをギミックを施してきたが、今回はそれを一新。「フォルムギミック」と「サーフェスギミック」という2つの新機軸を取り入れつつ、各モデル20という、異彩を放つほどの豊かなバリエーションでお届けすることとした。

各モデルの紹介の前に、今回の「サーフェスギミック」について少し説明をさせて欲しい。このサーフェスギミック、もちろん個人的にはものすごく気にいっている。しかし、苦手な人にはただただ気味が悪いだろうし、トライポフォビア(ブツブツ恐怖症・集合体恐怖症)の方にいたっては「生理的に無理」以外のなにものでもないだろう。

平たく言って、かける人を「生理的に」選ぶカスタム……そんなギミックを施していいのかどうかは僕の中でも大きな問題であった。けれど僕は、それを分かっていて尚、このカスタムを採用した。

理由は……。

前に進みたいから。

25周年の表のテーマは「On The Way」。
25年歩んできたけれど、まだ「道半ば」という意味でつけたテーマである。
「道半ば」であるなら、一歩でることが絶対に必要であるし、
一歩でるなら、いまのこのタイミングを置いてはない。
そう感じたから、挑戦に踏み込んだのだ。

さて『99』の話。

『99』は「つくも」と読む。
モチーフとしたコミックでの「主人公の育ての親」の名前だ。

ベースフォルムは、1970年代のロックスターをイメージさせる骨太なスクエアシェイプ。フロント上部の斜めに落とし込んだカッティングが特徴的である。

フォルムギミックは、サイバーパンク感を表現したかったので、右フロント上部にボルトを埋め込み、左フロント上部はカットを施した。ここに、サーフェスギミックをプラスしたフルギミックバージョンは圧倒的な存在感で、個人的には「○頭」シリーズのひとつの到達点ではないかと感じている。

カラー展開は、25周年記念のMONKEYオリジナルに加え、テーマとしたコミックつながりで、2020年にリリースした「平安ダークネス」で採用していた鬼柄を復活させた。また『守破離』で使用しているキャンディカラーや、サーフェスギミックを施すとニシキヘビの様相を呈するべっ甲も抜群の仕上がりとなっている。

フルノーマル、フォルムギミック、サーフェスギミック、フルギミックの4バリエーションを、それぞれに5色で展開しているので、4 × 5 = 20バリエーションでの展開となっている。

【文責:猿頭★岸】