今回、リリースするモデルは、2017年にリリースした「陸海空3モデル(『陸童』『海童』『空童』)」の流れを組む「雪月花3モデル」である。
いまだから明かせるが、陸海空3モデルのデザインの裏には「軽くて、ビジネスでもかけられるMonkeyFlipが欲しい」というお客様からの声があり、それはMonkeyFlipがブランドの軸とするギミックとは相反するリクエストで、だからデザイナーとしても僕は、いわゆるダブルバインドのような心境に陥っていた。
「アッチを立てればコッチが立たない」引っ張りあいの中、ふと降ってきたのがカブトムシ。もっと言うなら「昆虫の身体は、戦闘機と同じように、機能に必要ないものがすべて削がれているからこそ美があるのだ」と、今から遥か昔、大学時代に習った言葉だ。その一例として、カブトムシが引かれた。「カブトムシのツノは生きていくために必要だから、あの形状になっていて、それが造形としての美しさを支えている」……確かそんな内容だったはずだ。
本当か?
カブトムシであのツノを持っているのは雄だけだが、ツノの役割はエサ場を確保したり、メスを獲得するための武器としてだ。だったら、他の形状でもいいんじゃないのか?
たとえば先が尖ったシャベルのような形なら、どうだ? 機能としては役割を果たすだろうが、でも想像を欲しい(想像ができないなら生成AIにプロンプトを打ち込んで描いてみて欲しい)。カブトムシがシャベルのような形のツノを持っていたら……美しさは損われていただろう。
そして、「そうか」とあるひとつの解にたどり着いた。
機能として働いている場所に、少しだけギミックを組み込もう! 具体的には、こめかみのあたりでレンズホールドをする部分に少しのエッヂを立てることによって、MonkeyFlipらしさを表現しようと思ったのだ。
『龍花』は、THE MonkeyFlipの味わいを大切にデザイン。フロント・テンプルとも、他の2モデルよりギミックを大目に入れた、いわゆる「らしさ」があふれるモデルである。
ベースとなる生地の話。
軽さを大切にしたため、陸海空3モデルと同じ5mmを使っているが、実は今回はひとつ新たなチャレンジを加えている。オリジナルで制作し『Freaky』と名付けたカラーリングである。
実はずっと、ヨーロッパのブランドが過激にショーウィーな生地を使ってカラフルなバリエーションをリリースしているのを見るにつけ、MonkeyFlipでも何とかできないかとずっと考えていたのだ。しかし、ヨーロッパブランドがそれをできるのは大きなロットで製産しているからであり、我々のような小ロットでは、オリジナルのカラーを作ることはできなく、忸怩たる想いを続けていた。
ところが、だ。ひょんなことからいい出会いがあり、今回MonkeyFlipでも制作可能な方法が見つかったのだ! もちろん完全に自由と言うわけではなく、ある程度の制約はあったが、それでも好きな生地を組み合わせてオリジナルでカラーを制作できたことは、とても嬉しい!!!
ビジネスでの使用を考え、全体的に落ち着いたカラーバリエーションとした中に、異彩を放つ『Freaky』カラーを加えたことで、雪月花3モデルはかなり満足度高く仕上がった。ぜひ見ていただきたい。
最後にモデル名のこと。
座敷童から「童」の文字をいただいたが、今年はなんといっても辰年である。往年の『猿月宝』シリーズを懐かしみ、雪月花の頭に「龍」つけてモデル名とした。
(文責:猿頭★岸)