ブラック井県鯖江市。言わずと知れた、日本最大の眼鏡の産地である。僕は年に幾度か訪問し「なんか面白いものないかなぁ」と探り続けているが、これがどうして、なかなか、ない。
しかし、である。犬も歩けば棒に当たるもので、昨年「なんだこれは!」という技術に出会った。今回のシリーズで包帯や錆を表現した(ギミック好きの僕には堪らない)、立体型のドローイングだ。
いやもうね、そのときの衝撃たるや! である。
身悶えするような興奮! である。
出会った1秒後には、「これでずっとやりたかったアンダーグランドテイストが表現できる」と、ウカレ猿になったくらい。
だからこそ。商品化までには時間をかけた。鯖江の技術を最大限に活かすため、ベースフォルムにはフラットでオーバーサイズなデザインを採用。BEM(ベム)は、ビッグシェイプのウエリントン。インパクトのあるボリューム感でありながら、顔馴染みのいいデザインにした。
そこにマミフィケーション*1をモチーフとした「包帯」と、ノイズミージック*2をモチーフとした「錆」をオン。かなり複雑な要望を出したのだが、それを見事にフレームのせてくれたその技術はやはり素晴らしく、想い描いていた以上のモデルに仕上がった。
話が横にそれるが、僕のギミック好きは、日常から逸脱した「コブ」のようなものへの憧れからきている。性行為にはそもそも不必要なミイラじみた緊縛とか、音楽の二大構成要素の旋律とリズムを削ってその他のものだけで構成したノイズとかは、まさに僕の嗜好のど真ん中なのだ。
なお最近、モデル名となっているアニメのリメイク放映が始まったが、狙ったわけでは全然ない。それどころかまったく知らなくて、偶然の恐ろしさを感じつつ、オカルトが大好物の僕としては「あの家族」に呼ばれた気がして嬉しくなっている。
(文責:猿頭★岸)
*1 マミフィケーション(mummification bondage)
ミイラ緊縛の意味で全身拘束の手法。主に欧米に浸透している緊縛法で、性行為におけるプレイの一つ。
*2 ノイズミージック(noise music)
楽器と見なされないものを音源として使用し、楽曲を構成していく音楽。リズムや旋律は存在しない。