このモデルのストーリーを伝えるためには、いまから10年以上前、MonkeyFlipにとって大きな岐路になった2008年に話を戻さないといけない。

その年、MonkeyFlipは「ショップ」から「ブランド」へ、進む道の舵を大きく切り直した。具体的には卸販売を開始したのだ。たしかに当時でも、オリジナルモデルはすでに10年近く作っており、発表したモデル数も200を超えていた。しかしそのすべては自店でのみ販売するだけの、いわゆる「ショップオリジナル」だった。

そこから一歩踏み出し、

「オリジナルを全国に広めたい」
「ショップを卒業し、ブランドになろう」

そう決意し、全国の眼鏡店さんにお披露目すべく、2008年秋、毎年ビッグサイトで行われる眼鏡の展示会「IOFT」に出展したのだ。たずさえていったオリジナルモデルは、自店で人気のあるモデルをベースに製作した8つのサングラス(ヒット作となった『空前』や『泰山』はこのときのリリース)。夢と希望に燃えての初出展だった。

 

しかし、結果は……。

 

いまこの文章を書いていても胸が苦しくなるほど、ダメだった。
悔しさや情けなさから、展示会最終日の夜、涙にくれたほどである。

このままではダメだと分かった。
じゃあ、どうしたらいい?

僕たちは悔し涙の中で考えた。そして辿り着いたのが、アパレルのように「コレクションに明確なテーマを持つこと」当時アイウェアの世界ではコレクションテーマを掲げて新作をリリースするブランドがほぼなかった(現在もあまりないが)。そこにフォーカスすることで風穴があくと考えたのだ。

それから一年。
MonkeyFlipは2009年IOFTで『Goth』をテーマにしたコレクションを発表。前年の悔しさを晴らす成果を手にすることができた。嬉しかった。これがMonkeyFlipの進む道だと思った。だから以降、『平安ダークネス』『Trotolic』と続く、闇の世界に片足を入れたコレクションを展開していくことになったのである。

 

さて、ここでやっと今回のモデルの話になる。

2009年の『Goth』コレクションのなかで、もっとも人気を集めたモデルが『紫電』である。時が流れるのは早いもので、あれからもう10年が経つ。この10年という数字が僕にはひとつの区切りのように思えて(また初心に帰るという意味を含め)、今回『紫電』をモデファイした『紫電改』をリリースした。

10年。
短いようで長い時間である。
僕のデザインに対する考え方でも、変わったこともあれば、変わっていないこともある。それはなにか、いい機会なので箇条書きにしてみた。

<変わっていないこと>
・かけたときにかけたひとがカッコ良くなること
・立体的なデザイン
・コレクションにそったカラー展開

<変わったこと>
・アシンメトリーに対する想い入れが強くなった
・「カスタム」という眼鏡の新しい可能性を手にした
・かけ心地に対するこだわりが増した

上記に対してひとつひとつ説明はここでは割愛する。できれば『紫電改』を手に取って、実際にかけていただいて、僕の10年の「変化」を感じて欲しい。10年分の僕の想いが詰まっているから。

*お気づきとは思うが『紫電』も『紫電改』も戦闘機の名前である。

(文責:猿頭★岸)