MonkeyFlipの真骨頂といえば、「ボリューム感のあるフォルム」と「アシンメトリーなデザイン」、そして「テーマに基づくギミック」ではないかと、デザイナーとして僕は考えている。

そして同じくデザイナーとして僕は最近、上記の3つの中でも「テーマに基づくギミック」にもっとも心を惹かれている。

テーマはもちろん「トレンドなもの」ではない。世の中の流れとはまったく関係なく、そして自分でもなぜだか理由は分らないけれど、僕の中に忽然と立ち上がってきたテーマに惹かれるのである。それは僕の性格上「暝いもの」が多いのだが、そのテーマを密かに(ときに派手に)メガネに入れ込んでいくことに、無上の悦びを感じている昨今なのだ。

さてでは一体、
今回はどんなテーマに惹かれたのか?

ズバリ
「不足=Lack=欠けている部分」
である。

昔から僕には「Lack」に惹かれるところがあった。けれどずっとそれは霧のようなもので掴み所がなかったのに、今年コロナに揺さぶられて「あるべきものを失った」ことが幸いしてか輪郭が見えてきて、そしてデザインしたのが、『蒼龍』と『八雲』である。

このテーマを『蒼龍』と『八雲』に、どうギミックとして取り入れたかは……あえて言わないでおきたい。僕の中では「Lack」を追い求める旅はしばらく続くだろうという予感があるから、その一番最初のモデルとなる『蒼龍』と『八雲』では、手の内を隠しておきたいからだ。

より具体的な、デザインの話に移ろう。

『八雲』は、かなり挑戦的なデザインをした。
全体的にアップサイズなデザインは、ともするとレトロクラシックに流れてしまいがちだが、それじゃあ全然つまらない。フロントエンド上部に角のようなアクセントをつけることによって、MonkeyFlipらしいファットな存在感のある一本に仕上がった。

カラー展開は7色。
6色のノーマルカラーに、もう一つスペシャルカラーを加えた。

このスペシャルカラー、オリジナルでデザインを起こしたものだが、実は初めての試みとして伏線をはってみた。今年の夏にリリースした「砂の嵐シリーズ」のマークなどですでに使っておいたのだ。自分としては半年をかけた壮大な伏線である。伝わったかどうかはまったくわからないが、こんな時代だからこそ、遊び心を大切にしたいと思ってやってみたのだ。

なおモデルの名前は、戦艦(正確には「蒼龍」は航空母艦で、「八雲」は装甲巡洋艦)から拝借した(これまでボリュームのあるデザインは戦闘機から名前を拝借していたが、ついに限界が来たので、今回から海に力を借りることにしたのである)。

文責:猿頭★岸